自主性を育む組織作りと従業員への想い(株式会社臼井工業所 インタビュー②)

第二回は、株式会社臼井工業所の臼井氏、八木氏より、同社が掲げる「全ての人に感謝と幸せを」の経営理念の想い、それにもとづく組織作りや育成思想についてお話しいただき、人が根付く背景に迫ります。

臼井工業所が掲げる「全ての人に感謝と幸せを」の理念とは

貴社の経営理念にある「全ての人に感謝と幸せを」という言葉が気になりました。 

臼井氏:この理念は、昔から当社が掲げていた理念です。「全ての人」とは、世界中の人というよりは臼井工業所に関わってくれている全ての人を指しています。従業員、お客様、そして当社に関わるステークホルダーの皆さまと、WINWINの関係を築いてくことを大切にしています。 またVisionは「お客様に喜ばれる会社になる。お客様に選ばれる会社になる。100年企業になる。」になります。
継続して長く選ばれる会社になるためにも、私の思いとしては誇りとやりがいを持てる会社にしたいと思っております。やはり、従業員に長く働いてもらえる会社であるためには「やりがい」や「誇り」を持って働ける会社である必要があると思っています。自分の子供に「お父さんは、この会社でこんなに凄い仕事をしているんだよ」と胸を張って自慢できるような会社でなければ、自信をもって良いモノづくりはできないと考えています。

臼井工業所の本社正面玄関

 

理念を形にするために、変えたこと

社員の皆さまがやりがいや誇りを持つために、具体的に取り組まれていることはどんなことですか

臼井氏:一つは、これまでの人事制度を見直したことです。昔は年功序列型で、勤務年数とともに徐々に昇給していくような仕組みだったんです。そこを改め、個々の評価に応じて、しっかり報酬が得られる賃金体系へと変更しました。ボーナスについても、人事評価と連動する形にしています。さらに毎年「年間表彰」を実施するようにしました。その年に特に頑張ってくれた社員に対して、金一封やお米等を贈るなど、日頃の努力をしっかり評価し、還元する取組をおこなっています。

 

八木氏:とはいえ年功序列の要素も一定程度残しながら、長く活躍してくれている社員が安心して働き続けられる環境づくりも大切にしています。それに加えて、頑張ったら頑張った分がちゃんと評価されるような両軸の仕組みを導入することで、社員の満足度を上げていこうと試みています。ただ評価をするほうのプレッシャーは大きいですね。

 

臼井氏:やはり、できることなら全員良い評価してあげたいですからね。人を評価するというのは、お互いにとって気持ちの良いことばかりではありません。だから、きちんと伝えなければいけない。そのために言葉の選びかたは特に意識していますね。「ここをもう少し頑張ったら、もっと伸びるはずだよ」などとコミュニケーションには特に意識を向けています。

 

他に取り組んでいることはありますか

八木氏:制度面だけでなく、働く職場環境にも気を配っています。この地域は、夏は本当に暑くて冬は寒いんです。でも現場には、十分な空調設備を整えることができていませんでした。そこで工場の改装を行った際、現場の社員が快適に身体を休められるよう、エアコンがしっかり効いた綺麗な休憩スペースを新設しました。 少しでも働きやすい環境を整えることで、日々の疲れをリフレッシュしてほしいと考えています。

 

臼井氏:ほかにも社員が働きやすい職場づくりを意識しています。弊社では有給休暇の取得率はほぼ100%で、半日単位の休暇も気軽に取れるようにしています。それに残業もほとんどしていないですね。これは昔から続く会社の文化でもありますね。
やりがいや仕事に誇りを持ってもらうため、当社の現場社員が造っている部品が車両のどこに付いてどんな車両になるのか、お客さんに頼んで工場見学を行ったりもしています。 現在生産しています水素燃料電池車(FCV)も見に行きました。

                                                                                                                                          

育成にかける想い

社員にとって非常に働きやすい環境だと思いますが、同じような環境を作りたいと思っても実際にはできていない企業も多いと思います。どのように実現しているのでしょうか

八木氏:仕事の自動化と多能工化の2つだと思います。現在、職場の中心となっているのは30~40代の社員です。創業当時の職人のように、ゼロからすべてを作り上げる技術を身につけてほしいと言っても、正直なところ難しい部分もあると感じています。だからこそ、機械で自動化できる部分については、積極的に活用していく。もう一つは、仕事を単能工化させずに、多能工化できる環境をつくることですね。「一人ひとりが、さまざまな仕事ができるようになろう」という考え方を進めています。仕事量の波や社員の休みに柔軟に対応できる組織を作るためには、これまで経験していなかった業務にもチャレンジしてもらい、できることの幅を広げていく必要があります。

溶接作業に取り組む社員

 

多能工化もいうのは簡単ですが、なかなか根付かせるのは難しいですよね

八木氏:そうですね。弊社では自主性を重んじているので新しいことにチャレンジしたい人には、もちろん積極的に取り組んでもらうんですけど、全員が最初から前向きに挑戦できるわけではありません。だからこそ、新しい仕事にチャレンジする際のハードルを、できる限り低くすることを意識しています。例えばパソコンが苦手な人が突然パソコンを使ってといわれても難しいじゃないですか。だから、まずは得意な人が作業している様子を、みんなで一緒に見てみようという形にしています。一人でプレッシャーを抱え込まないようにするためです。ロボットの操作一つとってもみんなで見ながら学ぶことで、自然と操作を理解できますし、各人ひとりが「ちょっとやってみようかな」と手を出しやすくなるような環境作りを意識しています。

 

昔からそういう文化が根付いていたんですか

八木氏:昔は、本当に「先輩の背中を見て覚えろ」という世界でした。いわゆる1人親方のような感覚で、みんなそれぞれに仕事の進めかたへの強いこだわりを持っていたんです。例えば、自分が若手だった頃、難しい板金加工について、あるベテランの方から「こうやるんだよ」と教わっていたんですね。ところがしばらくすると別のベテランが来て、「そんなやり方じゃない!」と言うんです。何が正しいのかわからず、すごく戸惑った覚えがあります。最後にできあがる製品は、どの方も本当に素晴らしいものを作るんですが、アプローチの仕方がそれぞれ違うんですよね。ただ、今の時代に同じような教え方をしても、なかなか受け入れられませんし、長続きもしないと思っています。小さなことから体験させて、少しずつ成功体験を積み重ねてもらう。そうした積み重ねが、新しいことへの挑戦につながっていくと考えています。まあ、そうやってみんなに多能工になってもらわないと、現場が回らないという切実な理由もあるんですけどね(笑)。

新型ベンディングマシンを操作する社員


業種   大・中・小型自動車用部品製造、試作板金部品製造、少量・補給部品製造、産業機械用部品製造

設立年月          1970年8月

資本金              10,000,000円

従業員数          22人

代表者              臼井 正文

本社所在地      〒252-0184神奈川県相模原市緑区小渕402

電話番号          042-687-3020

公式HP           https://usui-kogyo.com/

この記事の著者

清野裕樹

清野裕樹中小企業診断士

神奈川県中小企業診断協会所属。これまで企業の採用・育成・組織開発の活動に取り組んできた経験を活かし、中小事業者支援に取り組む。

この著者の最新の記事

関連記事

ページ上部へ戻る