時代の変化に合わせピンチをチャンスに変えてきた歴史(株式会社臼井工業所 インタビュー①)

株式会社臼井工業所は、自動車向けの試作板金部品の製造をおこなってきた創業56年の企業です。第一回は、同社営業部専務の臼井聡氏、製造部の八木氏に会社の歴史や試作品から生産品へ事業を広げていった背景を伺います。

笑顔の臼井専務(左)と八木課長(右)

 

相模原の地で生まれた臼井工業所の歩み

御社の事業内容と歴史について教えてください。

臼井氏:当社は昭和45年に創業しました。もともとは日野自動車で働いていた臼井藤吉と日野自動車OB5名で工場を立上げ、創業者は私の祖父臼井勝政になります。創業当初から現在に至るまで、日野自動車株式会社様とは長年にわたる取引を継続しており、その関係は56年以上に及びます。長い年月の中で培われた信頼関係は、当社の事業基盤の一つとなっています。
創業当時は、大・中・小型自動車向けの試作板金部品製造を主力事業として展開していました。試作部品は、新車開発における評価や検証のために使用されるものであり、高い精度と短納期への対応力が求められます。当社はこうした厳しい要求に応え続けることで、技術力と対応力を磨いてきました。
現在の代表は5代目となる臼井正文ですが、私を含め、歴代の経営者は日野自動車様へ出向し、車両開発全体の動きを覚えて帰ってきました。お客様の現場を深く理解した上で経営をおこなってきたことも、当社の大きな特徴だと考えています。
その後、試作板金で培った技術力を活かし、現在では生産品と呼ばれる自動車部品の量産品製造にも事業領域を拡大しています。当初は売上の中心が試作品でしたが、現在では売上の約7割を生産品が占めるまでになりました。製造している部品も、車体のボディ部品からシャーシ内部の部品まで多岐にわたり、自動車づくりを支える幅広い領域で事業を展開しています。

 

従業員の構成はどうなっていますか。

臼井氏:現在、当社は役員を含め22名の体制で事業を展開しています。営業部門は私が担当し、製造部門については八木がみています。社員の年齢層は20代から、定年を迎えた60代まで幅広く、女性社員も3名が活躍してくれています。平均年齢は44歳になりますね。
採用は、これまで中途採用を中心におこなってきましたが、一度入社すると10年以上活躍してくれる社員が多いですね。自動車業界では、大手企業様においても人材確保に苦労されているという話をよく耳にしますが、ありがたいことに当社では比較的そうした苦労に悩まされずに今日まで事業をおこなってきました。

 

臼井工業所が手がける試作品の技術

創業時から続けられている試作品は、どのようなものを作っていらっしゃいますか。

八木氏:例えば自動車の補給部品ですね。過去に販売した車の部品は、現物はあるけど、型が存在しないということがあるんですよね。そこで、現物の部品をもとに、その形状や構造を調べて、CATIAといわれるCADや、3Dスキャンを使って再現しています。いわゆるリバースエンジニアリングと呼ばれるものです。昔はマシニング設備がなかったので、職人が目利きと技術を頼りに製品をつくって、そこから石膏で型を作ったりしてました。

 

臼井氏:弊社には一級板金技能士が2人いるんですが、3次元5軸制御レーザー加工機が2台あるのでそれをフル活用して大型の製品などを加工しています。例えば自動車の両側に配置される骨格部材である「サイドメンバー」などです。サイドメンバーは、車の強度や剛性を支える重要な部品です。車の外板に位置する部分でもあるため、デザイン面でのセキュリティーや安全性に大きく関わるため、高い品質と機密が求められます。

 

八木氏:他にも試作品ではないですが、消防署が使用する特殊車両の一点ものの部品を製造したりもしますね。

同社が溶接・曲げ加工を手掛けたFCV大型トラックのファンシェラウド

 

生産品への挑戦

当初は試作品を中心にされていたところから、生産品も手掛けるようになった背景を教えてください。 

臼井氏:コロナ禍の頃から、試作品の依頼が目減りしてしまったんです。年間2~3回はあったプロジェクトも、車種そのものの立ち上がりが減り、仕事量が大きく落ち込んでしまいました。出社しても「作るものがない」という状況に陥ってしまったんです。そこで、なんとか変わりになるものを見つけたい一心で、これまで着手してこなかった生産品の受注を取りにいったんです。

 

そこからうまく生産品へシフトしていったのですね。

八木氏:うまくは・・・いかなかったですね。良い意味でも悪い意味でも、試作品づくりのやりかたが組織文化として根付いちゃってたんですよ。そのため「これからは生産品をやろう」となっても、どうしても試作品の感覚でやってしまっていました。試作品の場合は一点ものなので、ひとつのものに凄く丁寧に時間をかけて、高い品質で仕上げていくんです。一方で、生産品は量産が前提です。試作品の工程で生産品を造ると手間が多くなってコストが合わなくなってしまうんです。高品質でいかに作業を簡単に、ミスなく同じ物を作れるようにする仕組みと現場の意識を変えていくのにはかなり苦労しましたね。限られた予算の中で、いかに必要な品質基準をクリアするか。その視点を持ってもらうよう、社員に対して繰り返し意識変革を働きかけていきました。

 

臼井氏:それが今では、売上の7~8割が生産品になってますね。現在は、多いもので月500~600個程度の小ロット生産品も手掛けています。車種は大中型トラック、消防車、高機動車と多岐にわたる部品を手掛けています。

 

八木氏:これまで試作品も手掛けていた経験が、今では相乗効果を生んでますね。手書きでラフスケッチされた絵からCADで設計図を起こして、生産品をつくることもあります。まずは試作を行い、問題がなければ量産へ移行する、といった一連の流れにも対応できています。

穴あけ加工を施したマフラー部品の生産品


業種   大・中・小型自動車用部品製造、試作板金部品製造、少量・補給部品製造、産業機械用部品製造

設立年月          1970年8月

資本金              10,000,000円

従業員数          22人

代表者              臼井 正文

本社所在地      〒252-0184神奈川県相模原市緑区小渕402

電話番号          042-687-3020

公式HP           https://usui-kogyo.com/

この記事の著者

清野裕樹

清野裕樹中小企業診断士

神奈川県中小企業診断協会所属。これまで企業の採用・育成・組織開発の活動に取り組んできた経験を活かし、中小事業者支援に取り組む。

この著者の最新の記事

関連記事

ページ上部へ戻る