承継と変化―変えたこと、変えないこと(大雄塗装 インタビュー②)

第2回では、奥様の実家の家業を引き継いだ神田代表取締役に、承継後に何を変え、何を変えずにきたのかを伺う。短納期対応を強める一方で、創業者の代から大事にしてきた効率性重視の考え方も守り続けてきた、その考えと実践について聞く。

工場内での神田代表取締役

 

家業に入り、現場で学んだこと

―神田社長が大雄塗装に入られたきっかけを教えてください。

神田氏:結婚した相手が、ここの社長の娘だったんです。もともとは美容師を目指していて、資格も取り美容師として修行していました。ただ、自分で何かをやりたい、経営に関わりたいという思いは昔から強かったので、最終的にはこちらに入ることにしました。塗装にすごく興味があったというよりは、経営に興味があった、というのが正直なところですね。会社勤めよりも、自分で責任を持つ側に立ちたい気持ちがありました。

 

―入社後はすぐに経営へ入ったわけではないのですね。

神田氏:そうですね。最初の5年くらいは修業でした。塗装もやりましたし、製品をコンベアに取り付ける作業や段取りも含めて工程全体を一通り覚えました。見積もりを出すにも、工程が分かっていないと金額は出せません。結局、何にどれだけ時間がかかるか、どこが大変か、現場の実感がないと判断できないんです。だからまずは現場を知ることが必要でした。少人数の会社なので、手が足りない時は今でも現場に入りますし、現場経験は今でも経営に直結していると思います。

 

―神田社長がすぐに2代目として継いだわけではなかったのですね。

神田氏:はい。創業者は義父ですが、私がそのまま継いだわけではありません。もともと義父からは継いでほしいと言われていたのですが、義父が亡くなった時点では、自分はまだ勉強不足だと感じていました。そこで、いったん、創業時から会社を支えてきた役員が引き継ぎ、その後に私が3代目として継ぎました。

粉体塗装の作業方法を説明する神田代表取締役

 

承継の先にあった経営の現実

―承継後、どんな問題に直面しましたか。

神田氏:やはり大きかったのは、大口案件が減ったことです。これまでまとまった仕事をいただいていた建材や設備関連のお客様から受注が減った時期があり、売上への影響も小さくありませんでした。大手のお客様の案件は量が多い分、なくなった時の影響も大きいんです。売上が三割近く落ちたこともありました。承継して経営の厳しさを実感しました。

 

―その中で、どう受注を取り戻したのでしょうか。

神田氏:小口案件を積み上げました。取引先を訪問した際に、その周辺の他の工場も見て、帰ってからインターネットで調べて顧客リストを作りました。それを元に電話でアポを取って、営業するという地道なやり方です。もちろん全部がうまくいくわけではありませんが、そうやって少しずつでも受注につなげて売上の土台を支えないといけない。小さな案件でも大事にしていく必要があると思っています。

 

創業時から変えないこと、変えてきたこと

―承継後、変えてきたことは何でしょうか。

神田氏:短納期対応ですね。今日引き取って明日塗って届けるような案件でも、できるものはできるだけ応えるようにしてきました。義理の父の頃は「今日の今日とか明日なんてできない」と断っていたこともあったんですが、自分は、できる時もあるんだからできるならやればいいじゃないか、と思っていたんです。他では断られるけれど、大雄さんならやってくれる、と言われることもありますし、その対応が次の仕事につながることもあります。そこは自分が強めた部分だと思います。

 

―短納期の案件に対応できるのは、なぜなのでしょうか。

神田氏:うちは本当にいろいろな色、いろいろなお客さまの製品を扱っていて、多いときは一日10色、さらに15色くらい使うこともあります。日常的に色替えが多い現場ですので、色替えの切れ目にお客さまの急ぎの案件を入れて対応しやすいんです。そういった現場の回し方ができることが、短納期対応につながっていると思います。

 

―一方で、変えていない部分はありますか。

神田氏:効率を大事にすることですね。どうしたら効率よく回るか、無駄なく仕事が進むかは創業者の代から大事にしてきたところです。工場長にもそういう話はずっとしてきましたし、現場もそこは意識しています。ただし仕事を取りすぎると今度は現場が疲れてしまう。実際、忙しすぎた時期には社内の雰囲気が悪くなったこともありました。だから、忙しすぎてもよくないし、暇すぎてもよくない。そのバランスを見ることも経営の大事な役割です。

 

―変えることと守ることの両方があるのですね。

神田氏:そうですね。長年のお客様との信頼や、効率よく現場を回す考え方は守るべきものです。その上で、今の時代に合わせて短納期や小ロットにも応えていく。承継というのは、全部を変えることではなくて、土台を守りながら必要な部分を変えていくことなんだと思います。

粉体塗装を行う職人

 

家業を引き継いだ後に強めたのは、短納期・小ロットへの対応だった。しかし、その土台にあるのは、創業時から受け継がれてきた効率性重視の考え方である。変えることと変えないこと。その両方を抱えながら、大雄塗装は今の現場経営を築いている。次回は、その現場を支える人材育成と技能継承に焦点を当てる。


会社名:株式会社大雄塗装

業種   粉体塗装、溶剤塗装

設立年月          昭和54年3月9日

資本金              1,000万円

従業員数          10人

代表者              代表取締役 神田 健次

本社所在地      神奈川県相模原市中央区上溝3961番地

電話番号          042-762-0522

公式HP           https://daiyu-tosou.com

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