多彩なカラーアルマイトと「再アルマイト」に宿る職人の誠実さ(サンケン工業株式会社)

アルミに命を吹き込む「染色」の美学

アルミニウム。そのままでも美しい銀白色を放ち、軽量で加工性に優れるこの金属に、さらに色彩という「表情」と、腐食を防ぐ「盾」を授ける技術——それがサンケン工業が誇る「カラーアルマイト(染色アルマイト)」です。 アルマイト処理(陽極酸化被膜)とは、アルミニウムを電解液中で電気分解し、その表面に極めて微細な孔(ポーラス)を持つ酸化皮膜を形成させる技術。サンケン工業のカラーアルマイトの特徴は、この目に見えないほど小さな孔の一つひとつに、染料を染み込ませる「染色」という工法を採用している点にあります。一般的な塗装のように金属の上に塗料を乗せるのではなく、皮膜の内部に色を直接浸透させる。そのため、塗膜が剥がれにくく、アルミ特有の美しい金属光沢を維持したまま、鮮やかな着色が可能となる。同社は、自社工場内に大型の処理槽を備えており、シルバーアルマイトはもちろんのこと、ブラック、ステンカラー、レッド、ブルーといった多彩なカラーバリエーションを安定して生産できる設備と熟練の技術を有しています。2次電解着色ではないため紫外線による色焼けには注意が必要ですが、用途に合わせた最適なカラーリングの提案により、医療機器やゲーム機、店舗建材など、幅広い分野で採用されています。

カラーアルマイト

 

加工から表面処理まで。品質を守り抜く「ワンストップ体制」

サンケン工業のカラーアルマイト技術が輝きを放つ理由の一つに、同社が誇る「機械加工からアルマイトまでのワンストップ体制」にあります。鉄道車両の窓枠部品やスーパーコンピュータのラック部品といったハイテク・インフラ分野の製品は、コンマ数ミリの寸法精度に加え、放熱性の向上や腐食防止、識別や意匠性のために着色が施されます。通常、切削やプレスといった機械加工と、アルマイトのような表面処理は別々の業者が担うことがほとんどです。しかし、非常に繊細で傷つきやすいアルミは、会社間を移動させる「横持ち」の運搬時につくわずかな傷が致命的な不良に繋がります。同社では、長尺マシニングセンターや複数台のプレス機による精密な削り出し・成形の直後に、同一工場内でアルマイト処理へと移行できます。この一貫体制により、運搬による傷のリスクを根本から排除し、「もし傷があれば全て自社の責任」という極めて高い品質保証を実現しているのです。さらに、設計段階から「どのように加工し、どう染めるか」を見据えたトータルアドバイスができることも、ワンストップならではの強力な武器と言えます。

宮崎取締役とアルマイト処理槽

 

妥協を許さない「再アルマイト」のこだわり

同社の品質に対する姿勢を最も象徴しているのが、「再アルマイト」と呼ばれる工程へのこだわりです。 サンケン工業では、材料メーカーからすでにアルマイト処理が施されたアルミ板を仕入れて加工を行うことがあります。通常であれば、そのまま加工して納品した方がコストも時間も抑えられます。しかし同社は、加工後にあえて一度アルマイト皮膜を剥離し、もう一度自社で「再アルマイト」をかけるという二度手間をかけることがあるのです。アルミは非常に繊細な金属であり、加工機械への着脱や運搬時のわずかな接触でも微細な傷が生じやすいという特性を持っています。アルマイト被膜には、製造工程や輸送中の傷を防ぐ「保護」の役割があります。効率や目先の利益だけを優先すれば見過ごしてしまうような細かい傷であっても、同社の職人たちは決して妥協することはありません。あえて自社でもう一度表面を美しく保護し直し、完璧な状態でお客様のもとへ届ける。効率だけを優先せず、素材と品質に真摯に向き合う。機械加工から表面処理までを一手に担うワンストップ体制と、この手間を惜しまない誠実さと職人魂こそが、厳しい基準を持つ顧客から長く選ばれ続ける、サンケン工業の最大の「匠の技」と言えるでしょう。

この記事の著者

村上雅一

村上雅一中小企業診断士

東京都中小企業診断士協会城南支部、大田区中小企業診断士会所属。本業はネットワークエンジニアリング企業の代表取締役社長。本業での経験を活かし、中小企業の採用・人材育成支援、DX化支援などに取り組む。

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