攻めの採用戦略と環境対応で描く、町工場の未来(サンケン工業株式会社 宮崎取締役インタビュー③)

平均年齢を大幅に引き下げた採用戦略や、アルミの高いリサイクル性を活かした環境対応、そして展示会を通じた新規顧客開拓。最終回となる第三回は、次の50年を見据え「待ち」から「攻め」の姿勢へと転換を図るサンケン工業の未来像について伺います。

価格交渉と働きやすい環境づくり

―昨今のアルミニウム地金価格の高騰やエネルギーコストの上昇は、御社の経営にも影響を与えているのではないでしょうか。

宮崎氏:アルミ原材料費の上昇は非常に厳しい問題です。海外情勢の影響を受けやすく、3ヶ月に一度は価格が変わってしまいます。最近でも大きく値上がりしました。また、アルミは「電気の缶詰」と言われるほど生成にエネルギーを要する素材ですから、電気料金の高騰もダイレクトに響きます。

 

―そうしたコスト増を、どのように販売価格に反映させているのでしょうか。

宮崎氏:公表されている価格指標(NSP)に基づき、原材料費と加工費の内訳を提示しながら、お客様と粘り強い交渉を継続しています。幸い、当社では材料をお客様から支給していただく「支給材」の形態が6割から7割程度あり、ある程度のリスクコントロールはできていますが、企業努力だけでは吸収しきれない部分については、誠実に状況をご説明し、ご理解をいただく努力を重ねています。

 

―そうした厳しい環境の中でも、社員の皆さんが定着し、生き生きと働かれている理由は何だとお考えですか。

宮崎氏:特別なレクリエーションをしているわけではありませんが、コミュニケーションを大切にし、ワークライフバランスを重視した環境を整えているからだと思います。当社の年間休日は125日以上あり、基本的には土日祝日が休みです。

 

―未経験の方でも働きやすい工夫などはありますか?  

宮崎氏:入社前の工場見学で仕事の流れを詳しく説明してもらえるので、安心してスタートできたという未経験者の声も多いですね。残業についても、偏りのない安定した業務量を維持しているため、発生しても1日1時間程度、月平均で4〜5時間程度と非常に少なめです。前職が飲食業などでシフト制や深夜勤務に疲弊していた社員からは、「決まった休みが取れて、毎日定時で帰れるので生活リズムが整った」という声も聞いています。家族との時間や趣味の時間をしっかり確保できることが、結果として仕事への集中力や定着率の向上に繋がっていると感じています。

工場内で働く男性社員と女性社員

 

環境対応と新たな営業戦略

 ―SDGsへの取り組みについてもホームページで掲げられていますね。具体的な活動を教えてください。

宮崎氏:アルミは再生が可能な材料で、一度作られたアルミはわずかなエネルギーでリサイクルができるという強みがあります。日吉のような住宅街の中で工場を営み、事業を続けるには、環境への配慮が絶対に欠かせません。当社では、アルマイト処理で使用した薬品を浄化し、きれいな水にしてから下水に流すための大規模な廃液処理設備を導入し、厳格に管理しています。

アルマイト廃液処理設備

 

 

―このところ、新しい取り組みも予定されていると伺いました。

宮崎氏:2026年の3月中旬には、次世代の排水処理に関する実証実験をメーカーと共同で行う予定です。補助金なども活用しながら、最新の環境技術に挑戦しています。私が生きているうちにどれだけ進化するか分かりませんが(笑)、大手メーカーも再生材の使用にシフトしており、こうした社会情勢に合わせた環境対応の姿勢を明確に打ち出すことで、採用活動や新規の営業開拓においても大きなプラスの効果を感じています。

 

―展示会など「攻め」の営業戦略についても教えてください。

宮崎氏:長年、当社は既存のお客様からの紹介を待つ「受け身」の営業スタイルでした。しかし、既存の取引先に依存し続けることは将来的な機会損失に繋がります。そこで、街の加工屋として待っているだけではなく、少しずつ攻めに転じたいと考え、2026年2月に開催された「テクニカルショウヨコハマ」のような大型展示会にも出展しました。

テクニカルショウヨコハマ出展中のサンケン工業ブース

 

―今回の展示会では、どのような工夫をされたのでしょうか。

宮崎氏:以前は出展費用が比較的安価な異業種交流系の展示会に出展していたのですが、来場者の目的が物販寄りで、加工の受注にはつながりにくいという課題がありました。その反省を踏まえ、今回はターゲットを見直し、「テクニカルショウヨコハマ」に1コマで出展。プロのサポートも受けながらブース設計を行い、新規顧客の開拓に取り組みました。1、2回の出展で劇的な成果が出たわけではありませんが、出展の場を変えたことで自社の立ち位置を再認識でき、実際に新規のお客様との接点も生まれつつあります。

 

―最後に、今後の展望をお願いします。技術的な面ではいかがでしょうか?

宮崎氏:技術的な面で言えば、AIの活用や自動化も検討はしています。しかし、当社の仕事は多品種小ロットで、一点物に近いものが多いため、いちいちセッティングを変える手間を考えると、現状は人の手による対応の方が柔軟性は高いと思います。気候や湿度によって変化する加工条件を見極める「人間の感覚」は、まだまだ機械には代替できません。

 

―新しい設備の導入なども検討されていますか?

宮崎氏:現場で用いる機械の世代交代も進めています。例えば、昔特定の部品加工で使われていた年季の入ったプレス機があるのですが、当時の担当者が退職して、今は博物館のような状態になっている工程もあります。1,000万、2,000万もする立派な設備なのでもったいない部分もあるのですが、新陳代謝は必要ですから。

 

―まずは足元の技術を固めつつ、攻めの姿勢を貫くということですね。

宮崎氏:はい。当社の最大の強みである、機械加工からアルマイト処理までを自社で完結させる「一貫体制」をさらに磨き上げ、今ある環境でどこまで高められるかを突き詰めていきたいと考えています。まだまだやらされている感もありますが(笑)、とにかく「攻め」の姿勢を忘れずにやっていきたいですね。これからもワンストップでお客様の課題を解決し、「メイド・イン・ジャパン」「メイド・イン・横浜」にこだわったものづくりで、産業界を底支えしていきたいです。

笑顔でサンケン工業本社前に立つ宮崎取締役

 


業種   各種精密機械加工、アルミ押出形材加工、板金プレス、アルミ溶接、曲げ加工、

アルマイト加工

設立年月          1977年4月

資本金              1,000万円

従業員数          24人

代表者              代表取締役 宮澤 之弘

本社所在地      神奈川県横浜市港北区日吉7丁目15番地30号

電話番号          045-561-3333

公式HP           https://www.sanken-kougyo.co.jp/

この記事の著者

村上雅一

村上雅一中小企業診断士

東京都中小企業診断士協会城南支部、大田区中小企業診断士会所属。本業はネットワークエンジニアリング企業の代表取締役社長。本業での経験を活かし、中小企業の採用・人材育成支援、DX化支援などに取り組む。

この著者の最新の記事

関連記事

ページ上部へ戻る