- 2026-5-12
- 取材・インタビュー
サンケン工業の最大の武器は、材料の加工から表面処理までを自社で完結させる「一貫体制」にあります。鉄道車両や精密機器など、傷一つ許されないアルミ製品をいかに扱い、顧客の信頼を勝ち取っているのか。第二回は、同社の技術的優位性と、現場の職人たちが実践している並々ならぬこだわりに迫ります。
「責任の所在を逃さない」一貫体制の真価
―御社の最大の強みである「一貫体制」について、詳しく教えてください。
宮崎氏:当社は元々アルマイト加工という表面処理からスタートした会社です。しかし、アルマイト処理だけを行ってお客様が品物を持ち込んでくださるのを待つ「受け身」の姿勢では、事業として成り立ちにくくなってきました。
―そこで、加工の領域まで手を広げたのですね。
宮崎氏:ええ。切削や機械加工といった前工程も自社で手掛けることで、お客様の要望をより深く反映させることができるようになりました。現在では、営業スタッフがお客様と打ち合わせをしながら、「どのように加工し、どのような表面処理を施すか」を一気通貫で提案できる体制を構築しています。自社内でマシニング加工、プレス加工、アルミ溶接、曲げ加工、そしてアルマイト処理までを全て網羅しているのが当社の「一貫体制」です。

プレス加工機と作業風景
―一貫体制がお客様にもたらすメリットとは何でしょうか。
宮崎氏:アルミという素材は、鉄やステンレスに比べて軽量で加工しやすい反面、非常に柔らかく傷つきやすいという特性を持っています。多くの加工業は「切削だけ」「曲げだけ」「溶接だけ」と分断されており、お客様はA社に材料を頼み、B社で削り、C社でアルマイトをするといった複数の業者を管理する手間がかかります。
―なるほど。運搬時の傷のリスクも減らせるわけですね。
宮崎氏:その通りです。会社間を移動させる「横持ち」の際に傷がつくリスクが最も問題になります。アルマイト処理をした後に傷が見つかった場合、それが切削工程でついたのか、運搬中についたのか、処理工程でついたのか、責任の所在が曖昧になって押し付け合いになりがちです。当社であれば、すべての工程を社内で完結し、最終製品まで責任を持って届けられます。「もし傷があれば、それは全て自社の責任である」という明確な姿勢が、お客様にとって最大の安心感とワンストップのメリットに繋がっていると自負しています。
新幹線から電子機器まで。日本のインフラを支える現場
―どのような業界のお客様が多く、どのような製品を手掛けていらっしゃるのでしょうか?
宮崎氏:最も取引が大きいのは鉄道関連です。大手各社様向けに、新幹線や私鉄の車両内装部品、ドアの内装関係のパーツ、窓枠などを手掛けています。鉄道車両の部品は、乗客の目に触れる部分も多く、コンマ数ミリの寸法精度はもちろんのこと、視覚的な美しさと過酷な環境に耐える耐久性が両立されていなければなりません。
―鉄道以外にはどのような分野がありますか?
宮崎氏:その他にも、建築資材や家電、電子機器メモリーのラックの組み立てや、情報を記録するデスクユニットの筐体(マガジンケースの側板など)も手掛けています。
―加工の現場では、どのような設備や技術が活躍しているのでしょうか。
宮崎氏:例えばマシニング加工では、工具側が自在に動いて加工するタイプに加え、長さが3000mmまでの長い材料をセットして横に動かしながら削る長尺マシニングセンターを保有しています。新幹線の内装材のような長いものも、専用の加工治具を自社で作ることで、斜めや横からの複雑な加工にも対応できるように工夫しているんです。
―アルミの溶接も難しいと聞きますが、いかがですか。
宮崎氏:アルミの溶接も当社の強みです。アルミはスチールやステンレスと違って融点が低いため、とにかく歪みやすく、溶接には高度な技術と経験が必要です。熱で溶けすぎないように、形状に合わせて慎重に素材を載せていきます。複雑に曲がった窓枠のパーツも、型で抜いた後に曲げて、溶接して仕上げます。他社ではなかなかこの寸法精度は出せないと自負していますね。これらは非常に厳しい精度が求められるため、機械で加工した後に、最後は作業者が手作業でヤスリをかけたり、磨いたりして微調整するんですよ。まさに当社加工製品はデジタルな機械加工とアナログな職人技の融合です。
―アルマイト処理の準備工程でも、職人の方が手作業で磨きを行っていますね。
宮崎氏:はい。傷の部分だけを磨くとそこだけ不自然に光ってしまうので、全体を均一に、まんべんなく磨く必要があります。これは外国人実習生社員の2人体制で行っており、彼らがうちの磨きの中心人物として活躍してくれています。アルマイト処理自体も、温度や湿度、薬品の状態によって結果が変わるため、毎回が真剣勝負です。

アルマイトの準備で磨きをかけている作業風景
妥協を許さない「再アルマイト」の二度手間
―アルマイト処理における御社独自のこだわりはありますか?
宮崎氏:構造材や人の目に触れるような場所に使われるものは、アルマイト処理を施すことで美しさを出しています。実は、当社では材料メーカーから既にアルマイト処理が施されたアルミ板を仕入れて加工を行うこともあるのですが、加工後にいったんアルマイト皮膜を剥離し、もう一度自社で「再アルマイト」をかけることもあります。
―コストも時間もかかるのに、わざわざ二度手間をかけるのですか?
宮崎氏:ええ、あえてやっています。加工中にどうしても細かい傷がつくことがありますし、何よりアルマイト被膜には、製造工程や輸送中の傷を防ぐ「保護」の意味もあるんです。効率だけを優先すれば見過ごしてしまうような細かい傷でも決して妥協せず、あえて自社でもう一度表面を美しく保護し直す。この手間を惜しまない姿勢と職人としての誠実さが、極めて厳しい品質基準を持つお客様からの信頼に繋がり、当社が長く選ばれ続けている理由だと思っています。

アルマイト処理の作業風景
業種 各種精密機械加工、アルミ押出形材加工、板金プレス、アルミ溶接、曲げ加工、
アルマイト加工
設立年月 1977年4月
資本金 1,000万円
従業員数 24人
代表者 代表取締役 宮澤 之弘
本社所在地 神奈川県横浜市港北区日吉7丁目15番地30号
電話番号 045-561-3333
公式HP https://www.sanken-kougyo.co.jp/















