3つの「ケン」が紡ぐ49年の歴史。創業の地・日吉で迎えた、事業承継という名の新たな夜明け(サンケン工業株式会社 宮崎取締役インタビュー①)

1977年に横浜市港北区日吉で創業したサンケン工業株式会社は、アルミのスペシャリストとして成長してきた老舗の町工場です。創業者が掲げた「健康、健全、謙虚」という理念を核とする同社が、事業承継を経てどのように変わったのか。第一回は、取締役の宮崎康彦氏に会社の歩みや組織改革、そして独自のアプローチで成功を収めている採用戦略についてお話を伺いました。

インタビューに答える宮崎康彦取締役執行役員

 

日吉の地で刻んだ歩みと、運命の事業承継

―まずは御社の事業の歩みについて教えていただけますでしょうか。

 宮崎氏:当社は1977年(昭和52年)にこの横浜・日吉の地で創業いたしました。当時はアルミサッシなどが普及し始めた時代で、当社もアルマイト処理をはじめとするアルミ加工の専門業者として歩みをスタートさせました。

 

―創業から長きにわたり、地域に根ざしてこられたのですね。宮崎様ご自身はどのような経緯でサンケン工業に入社されたのでしょうか。

 宮崎氏:私が入社したのは2020年頃のことです。もともとサンケン工業は、創業者の岡前社長が長年に渡りトップダウンで引っ張ってきた会社でした。しかし、ご自身の年齢のこともあり、事業を信頼できる第三者に譲りたいという考えを持たれ、信用組合を通じていわゆる「お見合い」をさせていただいたのが大きな転換点です。

 

―そこで、現在の末広グループとのご縁が生まれたのですね。

宮崎氏:ええ。長野県に本社を置く末広商事が手を挙げ、当社は現在の末広グループの一員となりました。私自身はもともとトーヨーサッシ(現在のLIXIL)で、アルミ建材の世界でキャリアを積んでおりました。長年勤めた会社を希望退職で退き、単身赴任先の大阪から家族のいる横浜に戻ってきたのが、ちょうどその2020年頃だったのです。

 

―まさに絶好のタイミングだったわけですね。

宮崎氏:そうですね。末広グループの本社は長野ですから、横浜の拠点を現地でしっかりと管理・統括できる人間が必要だということで、共通の知人を通じて私に声がかかりました。コロナ禍の真っ只中でしたが、アルミ加工という私にとって縁の深い分野でしたし、自宅からも近かったので、この会社でお世話になることを決めました。早いものでもう5年以上が経ちますね。

 

―創業者の岡氏が掲げた「健康、健全、謙虚」という三つの「ケン」が社名の由来だそうですね。現在もその理念は引き継がれているのでしょうか。

宮崎氏:はい、社名はその三つの「ケン」から成り立っています。「健康」は社員が心身ともに健やかに働けること、「健全」は経営状態の透明性や安定性、そして「謙虚」は驕ることなく学び続ける誠実な姿勢を表しています。

 

―その中でも、特に経営において意識されている点はありますか。

宮崎氏:特に「健全」という意味では、しっかりと維持・向上できていると自負しています。私が来た当初は決して楽観視できる経営状態ではなく、立て直すべく様々な手を打ってきました。現在は原材料費の高騰など不透明な経済状況下にありますが、「健全」だけは何としても守り、さらに高めていきたいと考えています。

 

―「健康」や「謙虚」についてはいかがでしょうか。

宮崎氏:時代とともに捉え方が難しくなっている部分もありますね。会社に対する忠誠心としての謙虚さなのか、お客様に対する謙虚さなのか。私は、時代や社会の変化に合わせて柔軟に適応し続ける姿勢こそが、今の時代における真の「謙虚」だと解釈して組織づくりを進めています。

サンケン工業本社の外観

 

「個の牽引」から「組織の調和」への進化と若返り

―宮崎さんが来られてから、組織の体制はどう変わりましたか?

宮崎氏:以前は社長が自ら仕事を取ってきて、それを社員に振って対応してもらうという、まさに「個の力」に依存したスタイルでした。しかし、私が入社してから、定年退職などで上の世代が入れ替わっていく中で、役割分担を明確にし、組織としての体制を整えてきました。

 

―社員の年齢構成にも変化があったのでしょうか。

宮崎氏:入社当時は社員の平均年齢が50代後半と非常に高く、技術継承が急務でした。しかし、この5年間で積極的な採用活動を行い、なんとか平均年齢を40代まで若返らせることができました。現在の従業員は24名ほどですが、20代が1名、30代が8名と若手が育ってきており、将来に期待が持てる組織になりつつあります。抜けた人材を補充し、血を入れ替えることが私の最初の大きな仕事でした。

 

―中小製造業において、それほどの若返りを実現するのは非常に難しいことだと思います。採用面でどのような工夫をされたのでしょうか。

宮崎氏:現在は「ダイレクトスカウト」を積極的に活用しています。求人媒体などにただ掲載して待っていても手応えは皆無です。そこで、履歴書を拝見して「この人は」と思う方に、こちらから積極的にメールを送り、仕事内容に関心を持ってもらうようにしています。前職が飲食業など、製造業とは全く異なる異業種からの転職者も大歓迎で受け入れています。

 

―面接の際にも、現場の声を大切にされているそうですね。

宮崎氏:はい。面接の際には私だけでなく、将来先輩になる現場の社員とも話をしてもらい、実際の働き方や生活リズム、仕事の厳しさを直接伝えてもらうようにしています。相性を事前に確認し、納得した上で入ってもらう。そして既存社員にも採用に関わった当事者として新しく入るメンバーの育成に主体的に関わってもらうようにしていますね。この現場を巻き込んだ採用プロセスが、結果的に定着率の高さに繋がっているように感じます。

 

―人が入れ替わることで、技術面での苦労はありましたか?

宮崎氏:一時的に、それまでできていたことができなくなるという技術面の問題に直面することもありました。特に、長年当社のマシニング部門を支えてきたチーフが退職した際には、加工方法の研究やノウハウの継承に大変苦労しました。

 

―その壁をどう乗り越えたのでしょうか。

宮崎氏:「新しい海路は新しい人が見つけていく、探させろ」という考えのもと、古いやり方にこだわりすぎず、別の手法を新しいメンバーで考えていこうという姿勢で動いています。現在では、彼らが自分たちで考え、工夫しながら新しい加工方法を確立しつつあります。

アルミ材の加工作業をする若手社員

 


業種   各種精密機械加工、アルミ押出形材加工、板金プレス、アルミ溶接、曲げ加工、

アルマイト加工

設立年月          1977年4月

資本金              1,000万円

従業員数          24人

代表者              代表取締役 宮澤 之弘

本社所在地      神奈川県横浜市港北区日吉7丁目15番地30号

電話番号          045-561-3333

公式HP           https://www.sanken-kougyo.co.jp/

この記事の著者

村上雅一

村上雅一中小企業診断士

東京都中小企業診断士協会城南支部、大田区中小企業診断士会所属。本業はネットワークエンジニアリング企業の代表取締役社長。本業での経験を活かし、中小企業の採用・人材育成支援、DX化支援などに取り組む。

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